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家事

親族でない友人が後見人や保佐人になれるか

 

家庭裁判所は、親族でない第三者(友人)を成年後見人や保佐人に選任することがあるのでしょうか?

本人も友人もそれを希望している時、家裁にその希望がどの程度通るものなのでしょうか?

 

今回はこの点について、 実務経験10年以上有する現役弁護士が解説したいと思います。

 

後見人

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者の財産管理を担う者

保佐人

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者の財産管理を担う者。後見人に比べて、管理できる範囲は小さい。

 

結論

家裁が、第三者である友人を成年後見人や保佐人に選任することはあります。

 

認められた事例

 

本人Hは、80代で認知症を患い、長谷川式は10点代でした。

 

夫はすでに死亡し、子はなく、親族(兄弟)は全て県外にいて、交流は全くありません。

Hは自宅を保有していますが、預貯金はほとんどなく、年金により生計を立てています。

 

Hは数年前の入院時、看護師Yと知り合い、以後、家族ぐるみの付き合いしてきました。

 

Hの認知機能が低下してからは、YがH宅を訪問し、

Hの指示により年金を引き出して、Hのため買い物をする等の補助をしてきました。

 

この度、市町村の成年後見センターの勧めで、

成年後見人又は保佐人選任の申し立てをして、

今後の介護契約や、医療契約(入院契約)等に備えることとしました。

 

弁護士への相談

 

弁護士はHからの本人申立てによる保佐人選任の申立を受任しました。

(長谷川式10点代は、おおよそ保佐申立てを選択する目安となります。)

保佐人は友人Yしか考えられないとのHの強い訴えがありました。

 

Yは 60代の女性で、看護師を退職した後は福祉関係の仕事を続けていました。

Yは、夫と娘1人と同居中で、Yの夫は有名企業を退職し年金生活をしている状況でした。

 

弁護士は、保佐人候補者としては本人の希望等を考慮しYを推薦することにした。

 

保佐人選任の申立後

 

初期段階、家庭裁判所は第三者を保佐人として選任することをに消極的でした。

 

理由としては、

親族ではない第三者が財産管理をすると

使い込みなど不祥事の可能性が比較的高まる

と考えているようでした。

 

仮に保佐人に不祥事があった場合、監督責任を問われうるのは家庭裁判所だからです。

 

家裁は、今回の場合、保佐人候補者として専門職、具体的には社会福祉士の選任を考えているようでした。

 

家裁の方針変更

 

流れが変わったのは家裁調査官(※)と本人が面談したときです。

(※後見等の申立があった場合、家裁の調査官が本件を調査します。)

 

家裁調査官が、保佐人としてY以外の者を選任する可能性を説明した時、

Hが強くこれを拒否し、

「Yちゃんじゃないと絶対に駄目、Yちゃん以外には任せない!」

と強く訴えました。

 

この調査官との本人の面談後、調査官は保佐人候補者であるYを呼び出し事情聴取をしました。

 

その後、保佐開始の審判において、友人Yが保佐人に選任されました。

 

まとめ

 

家庭裁判所は基本的に、親族でない第三者(友人等)を後見人、保佐人に選任することについては消極的である。

 

しかし、

身寄りのない方で、本人の希望が強く、候補者も了解している場合、

候補者の身元がしっかりしていて、

後見人・保佐人となった場合の扱う財産がそれほど高額と言えない場合

 

などは第三者を後見人、保佐人に選任することがあると考えられます。