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民事

家賃を上げる通知が来ました。

 

相談

私は一人暮らしで賃貸アパート の1室を借りています。

アパート管理会社から通知が来たので見てみると、次の月より家賃を月額2000円アップすることに承諾する書面 へのサインを求められました。

サインをしないと、今の住居から追い出されそうで、どうするか迷っています。

もめたくないし、引っ越しも面倒なので、このくらいならサインして応じようと思うんですがどうでしょうか?

回答

あなたと大谷さんの間には 入居時に賃貸借契約が成立しています。

その契約の内容には賃料も 含まれています。

ですのであなたが新しい家賃額に同意しなければ、大家さんが勝手に賃料を増額することはできません。

したがって あなたが上記賃貸借契約を守っている限り、大家さんは賃料増額に同意しないことを理由として、あなたを本件アパートから追い出すことができません。  

承諾しないことによって何のペナルティーもありませんから、異議がある場合は 堂々とそれを拒否してください。

賃料が上がる場合

ただし、賃貸借契約の中に、賃料の増減 に関する合意事項が条項として組み込まれていることがよくあります。

従って、たとえあなたが承諾しなくても、大家さん側は賃料を上げることができる場合は、あるのはあります。

 

よくあるのが、

第◯条(賃料の増減)

この賃貸借契約の継続中、不動産価格の上昇、経済事情の変化、その他周辺の不動産に比べた場合の賃料相場の状況等により、賃料額が不相当となった場合は、一方当事者は、他方当事者に対して賃料の増減の請求をすることができる

と言うような内容の条項です。  

 

今まで田舎だった場所が、急に都市開発の対象地となり、 電車の駅が新たにでき、たくさんビルが立つなどの状況の変化によってその土地の価値が上がっているような場合、それより前に合意した賃料額では不相当となってしまう場合があります。

その場合はこの条項により相当な賃料に改定されてしまう可能性があります。

 

しかしそのような事情がない場合は、この条項により賃料増額できるのは、なかなか難しいと思います。

なぜならばここ十数年間においては日本の経済情勢を見るとインフレはほとんど進行しておらず、むしろ、ややデフレ状態にあると言えなくもないので(ここでは、エネルギーや、生鮮食品を除いたインフレ状況として述べています。)、経済情勢や地価の上昇を理由として賃料を上げるべきという状況までには至ってないと思われるからです。