弁護士中村亮佑のブログへようこそ
ビジネス

セクハラの法的概念 その2

 

当該労働者が嫌がれば、それはセクハラになる

という言説を聞くことがあります。

法的にその理解は正しいのかどうかについて、10年以上の実務経験を有する現役弁護士が検討します。

法律上の概念

 

各種の法律ではセクハラはどういう場合に認定されるのでしょうか?

民法709条(不法行為)

名古屋高金沢支判平成8年10月30日(労判707号37頁,判タ950号193頁) は
「職場において,男性の上司が部下の女性に対し,その地位を利用して,女性の意に反する性的言動に出た場合,これがすべて違法と評価されるものではなく,その行為の態様,行為者である男性の職務上の地位,年齢,被害女性の年齢,婚姻歴の有無,両者のそれまでの関係,当該言動の行われた場所,その言動の反復・継続性,被害女性の対応等を総合的にみて,それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には,性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして,違法となる」
と判示しています。

① 当該労働者の意に反する性的言動が全て違法となるわけではない
② 当該性的言動の態様や当時の職場の状況など様々な要素を判断材料とする
③ ②の結果それが社会的見地から不相当とされる場合違法となる
と要約できると思います。

不法行為に該当する場合

 

因果関係など他の要件を満たした場合、

セクハラをした人や、会社に対し、

 

精神的被害を受け、精神科病院などに通院した場合は治療費の請求をすることが考えられます。

 

それとは別に、慰謝料を請求することができる場合もあります。
裁判上の認められる慰謝料額としては、実務感覚で言えば、50,000円〜1,500,000円程度の範囲内のものが多いのではないでしょうか。 (もちろん例外もあります。)

人事院規則

 

国家公務員の服務規程である 人事院規則10ー10では セクハラを次のように定義しています。
(定義)

第二条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 セクシュアル・ハラスメント 他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動
他者を不快にさせる性的な言動であればセクハラである
と理解して良いでしょう。かなり広い定義になっています。

違反した場合

 

職員はセクハラをしてはならない

という規定(人事院規則10-10第五条)に基づき、

当該国家公務員に対し、懲戒処分等が行われる可能性があります。

 

まとめ

 

私の所感では、セクハラと言う概念の範囲は、以下のように整理できるのではないかと考えています。

 

日常的・国語的概念>人事院規則> 男女雇用機会均等法> 不法行為

 

それぞれ利用する法律ごとに、セクハラに当たるかどうかを、丁寧に検討していく姿勢が必要だと感じました。