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ビジネス

未払い賃料の回収と明渡実現の方法 その3

 

多額の滞納家賃に頭を悩ませておられる大家さんも多いのではないでしょうか?

ましてコロナ禍で「資力に乏しいと思われる賃借人」から、どのように滞納家賃を回収したらいいのでしょうか?

また 賃貸物件を「なかなか明け渡してくれない賃借人」に対してどのようにアプローチしていったら良いのでしょうか?

 

前回に引き続き

滞納賃料の回収をいかに行うか、

滞納賃料の回収はどの程度可能かについて、

そして明渡をどのように実現するか

 

について、実務経験10年以上の現役弁護士が、事例をもとに解説したいと思います。

 

B「荷物を置いていく」

 

さて2週間後の約束の日に再びBの店舗を訪れました。

しかし、店舗に備え付けられた大きな荷物2つがそのままでした。

 

Bに尋ねると

破産の手続を弁護士に依頼した。

だから自分の財産である荷物は任意に売却できない。

業者を使ってどこかに移設するにもその費用がない。

そして移設先の保管場所もない。

とのことでした。

 

家賃を20ヶ月も滞納している状況であっても、

一刻も早く店舗を明け渡して、大谷さんの空(カラ)家賃状態を回避する

という姿勢が賃借人において全く見られません

 

過去にさかのぼって、Aにおいて賃借人の選定に問題があったかもしれません。

 

結局これについても、適正手続に則れば、Aは

Bの意思に反して業者を使って、Bの荷物を処分することができません。

破産手続きが 予定されているならなおさらです。

 

結局、A側の不動産仲介業者の便宜で、

同業者の事務室にBの荷物2つを移設し、保管することになりました。

 

Lは覚書を作成し、Bがいつでも同不動産業者の事務室から荷物を運び出せる。

そのほかに店舗内にBの荷物はない。

と言うような内容の合意書も作成しておきました。

 

何とか明渡は完了です。

 

滞納家賃の回収が困難

 

後は賃料の回収をどのくらいできるかです。

 

しかし、Bが破産申立をする予定である以上、賃料回収もかなり困難となりました。

 

保証人に対する請求ができない

 

最初の賃貸借契約では、保証人Cがいました。

 

しかし、その賃貸借契約の期間が切れた際の

更新契約書に保証人のサイン、押印はありませんでした。

 

大家Aは

保証人に更新契約書にサインをもらわなくても、保証人Cはそのままだ

と勘違いをしていました。

 

更新契約についても保証人Cと再度、保証契約の更新契約書を取り交わさないといけません。

保証契約はそれ自体独立したもので、賃借人との契約により当然には更新されないからです。

 

本件では、保証人Cに対する未払い賃料請求も諦めざるをえませんでした。

 

家賃保証会社に対する請求も約2ヶ月分だけ

 

LはBに対し受任通知を送付した時点で、家賃保証会社Dに対しても、未払い賃料の保障債務履行請求をしていました。

 

最近は賃貸借契約締結時に、「家賃保証会社に加入する」という特約が付いていることが多いです。

しかし、Dとの間の家賃保証契約の約款、つまり、契約書の裏側に小さい文字で書いてある書類を確認すると、

「家賃の支払い期限から30日以内に請求したものに限りDが保証する」

と書いてありました。

 

つまり 本件で家賃を保証してもらえるのは、

請求から明渡完了までの約2ヵ月分

ということです。

 

結局20ヶ月分の滞納家賃の保証は、保証会社Dからなされない

という結論になりました。

 

家賃保証会社を付けているから安心だ

と思っておられる大家さんはこの点注意された方が良いです

 

滞納が始まった初期段階から保証会社には請求をすることを検討してください。

 

仮に初期段階から本件で請求していたとしても、

約款では支払い限度額が5ヶ月ぐらいに限定されています。

よって、いずれにしても

20ヶ月分の家賃の保証は、保証会社から期待できない

という結論になります。

 

結果

 

以上のとおり、何とか裁判所を使わずに明け渡しを実現できました

 

滞納家賃のほうは、

敷金と相殺して、残り14ヶ月分(20ヶ月分ー6ヶ月分(敷金))6ヶ月分を回収したに留まる。

賃借人B及び保証人Cからの未払い賃料の回収が困難。

家賃保証会社Dからの保証は2ヵ月程度

 

という結末となりました。

 

教訓

 

今回の賃借人の態度からして、

・初期段階の賃借人選定は重要なものであって、慎重さが求められる。

・賃貸借契約更新の際は、保証債務契約も更新する。

・保証会社に対しては、滞納の初期段階から請求を始める。

・それも半年程度の限度がある。