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家事

後見の本人申立における弁護士代理の可否

 

高齢者ご本人が、自身に後見人をつけてもらうための家裁への申立を、弁護士に代理してもらって、無事後見人をつけてもらうことができるのでしょうか?

 

高齢者本人は自身の後見開始の申立をすることができます(民法7条)。

この本人申立について弁護士がその申立の代理をすること(以下、「本人申立の弁護士代理」といいます。)ができるか?

 

以下、 キャリア10年以上の現役弁護士がこの問題について検討します。

 

問題点

 

本人と弁護士との間の、後見申立代理行為の委任契約の締結能力があるか?

 

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法7条)」

が、弁護士との委任契約を締結できる意思能力があると考えることは難しい。

よって、これは消極に考えざるをえないかと考えます。

 

家事事件手続法を確認してみます。

 

(裁判長による手続代理人の選任等)
第二十三条 手続行為につき行為能力の制限を受けた者が第百十八条(この法律の他の規定において準用する場合を含む。)又は第二百五十二条第一項の規定により手続行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を手続代理人に選任することができる。
2 手続行為につき行為能力の制限を受けた者が前項の申立てをしない場合においても、裁判長は、弁護士を手続代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を手続代理人に選任することができる。
3 前二項の規定により裁判長が手続代理人に選任した弁護士に対し手続行為につき行為能力の制限を受けた者が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とする。
(手続行為能力)

第百十八条 次に掲げる審判事件(第一号、第四号及び第六号の審判事件を本案とする保全処分についての審判事件を含む。)においては、成年被後見人となるべき者及び成年被後見人は、第十七条第一項において準用する民事訴訟法第三十一条の規定にかかわらず、法定代理人によらずに、自ら手続行為をすることができる。その者が被保佐人又は被補助人(手続行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。)であって、保佐人若しくは保佐監督人又は補助人若しくは補助監督人の同意がない場合も、同様とする。

一 後見開始の審判事件
二 後見開始の審判の取消しの審判事件(別表第一の二の項の事項についての審判事件をいう。)
三 成年後見人の選任の審判事件(別表第一の三の項の事項についての審判事件をいう。)
四 成年後見人の解任の審判事件(別表第一の五の項の事項についての審判事件をいう。第百二十七条第一項において同じ。)
・・・

 

 

法律は、後見申立+本人申立の事案について、

弁護士の代理申立を想定していない

ようにも読めます。

 

他方、これは純然たる本人申立ての事案について規定したもので、

弁護士の代理申立を排除する趣旨ではない

 

とも読めます。

 

実務

 

後見について、東京家裁では本人申立の弁護士代理が認められていない様です。

 

他方、私の管轄家裁(地方)では弁護士代理による本人申立が認められています。

 

よって、本件の場合は

市町村長申立によるか、

 

本人が自力で申し立てた後、家事事件手続法23条により弁護士を手続代理に選任してもらうか

と言うルートしか現状では無いようです。

 

ちなみに、本人申立の弁護士代理については、法テラスを利用できません。