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刑事

喧嘩闘争と傷害罪

 

  • 喧嘩などで相手に傷害を負わせ、逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いのでしょうか?
  • 早期の身柄解放はどのように実現したら良いのでしょうか?
  • 弁護士費用はいくらくらい必要なのでしょうか?
  • 国選弁護人と私選弁護人の違いは何なのでしょうか?

 

今回はこれらの問題について実務経験10年以上の現役弁護士が解説したいと思います。

 

相談例

 

私Aは 地元で小売店舗を経営する者です。

ある夜、女性と晩御飯などのデートに行きました。

2軒目のバーのようなところで飲んでいると、

地元の酔っ払った男性Vが私たちにしつこく絡んできました。

最初はいなしていたのですが、

あまりにもしつこくその男性Vが絡んできて、私Aと一緒の女性にもちょっかいを出してきました。

そのことがきっかけで、私Aとその男性Vは口論になり、

ヒートアップした2人は店外で一対一の喧嘩をすることになりました。

私はこれまで喧嘩などしたことなく、このような状況は正直怖かったのですが、やむを得ず受けて立ちました。

喧嘩を始める前に2人は、

結果がどうなっても恨みっこなしで、警察にも届け出ない

と言う約束をしました。

 

喧嘩は、最終的には私が相手に馬乗りになり、顔面殴打を何度か加えることで、決着がつきました。

しかしその後、相手が警察に駆け込み、被害届を出したことから、私は当日に警察に逮捕されることになってしまいました。

逮捕容疑は、

相手に対して手拳で顔面骨折等を負わせた

という傷害罪です。

 

今後の私の処分や店の経営がとても心配です。

私は留置施設から家族に弁護士の要請を頼みました。

 

着手

弁護士は、家族から相談を受け、その日のうちに留置施設のAと面会し弁護人として選任されました。

方針の決定

 

Aは本件の喧嘩は

「私が負けて怪我をする可能性すらあった。」

「事前にどんな結果になっても警察には届け出ないという約束であったのに今更刑事告訴するなんかは理解ができない」

と考えていました。

法的見解

本件では闘争の前に2人とも怪我を負わせ合うことを了解しています。

よって、傷害罪について

「被害者の同意がある」=「違法性が阻却されるのではないか」

という点が問題になります。

 

しかし、この同意は

喧嘩闘争という社会的相当性を欠く行為についてのものなので、

違法性が阻却されない

というふうに考えられます。

 

また、

正当防衛が成立しないか

という点についても

喧嘩状態においては基本的に正当防衛が成立することは難しいです。

 

従って、Aが本件を争って無罪の方針をとる場合、

法律上はなかなか難しい道を歩むことになります。

 

弁護士LとAはこのような話をする中で、

自分の店に早期に復帰しないといけないこと、

身柄拘束は本当に辛く一刻も早く外に出たいことなど

を理由として、

被害者の本件訴えを全面的に認めて謝罪する方針

をとることにしました。

示談交渉

このような方針のもと、弁護士Lが被害者Vに接触し、何度か話し合いを重ねた結果、

  • 後遺障害や、未確定の治療費分は、後日確定時に支払う、
  • 現時点では、確定している治療費や休業損害、通院慰謝料、破損した携帯電話代などを含めて約600,000円の支払を行う

と言うことで示談が成立しました。

Aの不起訴・釈放

被害者が告訴を取り下げるという条項も示談書に入りました。

この示談書と、示談金600,000円の領収書を持って検察官に報告し、

Aは逮捕から約10日後に無事釈放され、後日不起訴処分となりました。

 

弁護士費用

着手金として300,000円、 終結時の弁護士報酬として、不起訴を勝ち取ったと言うことを考慮して300,000円をいただきました。

弁護士費用は結局合計600,000円ほどかかったと言うことになります。

 

私選弁護人と国選弁護人の違い

 

被疑者又はその家族が、頼みたい弁護士を選べる

と言うところが大きな違いであると考えます。

但し、各弁護士の報酬基準とする弁護士費用がかかってきます。

 

国選弁護人は裁判所が選任する弁護士ですから 基本的に弁護士を選ぶ事はできません。

(再逮捕の場合など同じ被疑者の勾留が続くなどの場合は、同じ国選弁護人が選任されることになります。)

被疑者、被告人が弁護士費用を負担することも基本的にはありません。

 

それから国選弁護人を頼むには被疑者、被告人の資力が500,000円以下である必要があります。

ただし500,000円以上の資力を有する方であっても、

弁護士会が行う「初回無料で接見に来てくれる当番弁護士」を頼んだ場合、

その弁護士が私選弁護人につかなかったときには

国選弁護人をつけられる場合があります。