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ビジネス

一方的に減額された建築請負代金の回収

 

工務店からの発注を受けて建物を完成させたが、

代金の支払いを留保されている、

減額された

などでお困りではないでしょうか?

 

昨今のご時世で、原材料費が高騰しており、その分の代金増加請求に発注先が応じてくれない

という悩みもお持ちでないでしょうか?

 

今回はこれらの点について、実務経験10年以上を有する現役弁護士が事例をもとに解説したいと思います。

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相談例

 

不動産販売業者BはA建設に対し、設計図面とともに賃貸不動産(甲)の建設工事の一部(木工事)を発注した。

A建設は設計図面をもとに見積書をB不動産にFAXした。

B不動産は見積書を確認し、A建設に対し注文書をFAXした。

A建設はこの注文書に署名、押印した上で、 注文書をB不動産にファックスして送り返した。

Aは甲を完成させてBに引き渡した。

 

AがBに対して工事の代金を請求すると、 Bは

設計図面通りに施行されてない部分がある、

設計図面通りの材料が使われていない

などとして工事代金の30%(220万円)ほどを減額して支払ってきた。

 

確かにそのような面もないわけではないが、それはB不動産の指示があったり、Aの提案にB担当者が同意したものばかりである。

 

AがBに対して、勝手に減額された、30%に相当する請負残代金220万円を回収するためにどうしたらいいか?

 

結末

 

A建設はB不動産に対して、残代金220万円の支払いを求める訴訟を起こしました。

A、Bは裁判所の和解あっせんを受諾し、Aは請求額220万円の約68%である150万円を回収しました。

 

以下その流れを追っていきます。

 

受任通知

 

A建設の社長から相談を受けた弁護士は、早速、残代金220万円の請求を求める内容証明郵便をB不動産に対して発送しました。

B不動産にも弁護士がつき、 Bの弁護士よりこれを拒否する回答が届きました。

 

訴訟での争い

 

Aはやむを得ず、訴訟提起して残代金 220万円の回収を試みることにしました。

 

被告Bは、訴訟においても、本件工事について

①設計図面通りに施行されてない部分がある、

②設計図面通りの材料が使われていない、

③材料の仕入れについて過大な請求がある

などとして原告の請求を全面的に争いました。

 

原告A建設は、

①②については、 確かにその部分もあるが、それはB不動産担当者に逐一報告してその同意を得ている。

③については建築業界の常識として設計図面より少し余裕を持った長さや量を仕入れるのは当然のことである

などと反論した。

 

このように訴訟ではA Bによる主張反論が繰り広げられました。

和解による決着

 

一定の主張立証の後、裁判所が、

本件紛争の早期、円満解決のため、和解での解決はできないか

と打診してきました。

 

A建設社長としては、

これまでの訴訟対応、書面作成のための打ち合わせなどに大変疲弊しており、

裁判所が主導し、双方の了解の上で、B不動産がA建設に対し

220万円の約68%である1,500,000円

を支払うことで和解が成立しました。

 

弁護士費用等(一例)

 

A建設が本件の解決までに費やした費用は合計446,000円でした。

内訳

 

着手金

 

残代金請求額2200,000円を、「経済的利益」と考えます。

 

L法律事務所の報酬基準によると、着手金は

経済的利益× 8%

となっているので

2,200,000円× 8% = 176,000円

を弁護士LはA建設より着手金として受け取りました。

 

実費

 

B不動産に対する内容証明郵便代2000円ほど、

訴訟提起の費用として、印紙代23,000円ほど、 〒切手代5000円ほど

合計30,000円程度かかりました。

 

終結時弁護士報酬

 

本件では1,500,000円を回収できたので、

終結時弁護士報酬における

「経済的利益」=1,500,000円

と考えます。

 

L事務所弁護士報酬基準によると、終結時弁護士報酬は、

経済的利益× 16%

であるので、

 

1,500,000×16%=24万円

が本件の終結時弁護士報酬となります。

 

教訓

 

A建設は どのような対応とっていれば、本件のような紛争に巻き込まれなかったのでしょうか?

予防策につき、以下、まとめてみました。

 

1 甲建物の引き渡しと引き換えに残代金を受け取ること

 

本件ではA建設が、工事請負代金をもらう前に、甲建物をBに対して引き渡してしまいました。

引き渡しと残代金の受領を同時にしておけば、請負代金の取りっぱぐれは防げた可能性が高いです。

(ただし、実務上そのようなことがなかなか難しい場合がある事もあるでしょう。)

 

2 契約書を作成すること

 

本件では「注文書のFAXやりとり」によって「契約の締結」が行われていました。

もちろん請負契約は、口頭や、そのようなやり取りでも締結可能です。

 

しかし、今回のような紛争、特に工事の変更などが生じる事はよくあることですので、

「さまざまな状況変化に備える」

ため、事前に対応をまとめた書面があると、本件紛争を防げた可能性が高いと思われます。

 

約款の利用

 

しかし、請負金額や工事の種類がどんなものであっても、

いつも契約書を作る

というのは現実的では無いかもしれません。

 

国土交通省のホームページでは、建設工事標準請負契約約款がアップされています。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000092.html

 

標準的な工事であれば、これをそのまま契約書として使って良いと思います。

工事に応じて特殊な契約条項が必要な場合はこれに加えて、上記約款を少し修正する形の請負契約書を作れば良いです。

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この辺りの詳細は↓に載っています。法律専門職の方は参考にされてください。