皆様は、ご自身の財産をお子さんなどに相続させる手段として、
遺言による遺贈、 生前贈与、死因贈与
などと聞いたことがあると思います。
しかし、
結局どれを選べばいいのか分からない
という悩みをお持ちではないでしょうか?
今回はこの点について、実務経験10年以上を有する現役弁護士が解説していきたいと思います。
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相談例
私Aはそろそろ、終活の1つとして自分の資産を長男Cに相続させることを検討しています。
どのような方法があるでしょうか?
メリット、デメリットを教えてください。
ラインナップ
1 遺言による遺贈
2 生前贈与
3 死因贈与
4 共通する注意点
5 まとめ
遺言による遺贈
これは相続させる手段として、最もメジャーなものと言えるでしょう。
メリット
1 相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×相続人の数
が比較的大きい。
2 撤回、書き直しが自由
Aが1通目を書いた後、
矛盾する内容を2通目の遺言に書いた場合、
矛盾する部分は撤回されたことになり、2通目の方が有効とされます。
デメリット
1 相続人Cらが自分の死後、遺言を発見してくれるか不明なこと
せっかく書いた遺言も相続人が見つけてくれなければ意味がありません
かといって、
相続人に遺言の場所を事前に伝えておくと、
内容がバレてしまう可能性がある。
2 方式の決まりがある。
自筆証書遺言については、
遺言の全文、日付、及び、氏名を自署で行う必要があります。
押印も必要です(以上、民法968条)。
これに反すると無効な遺言となります。
※最近は法改正によりタイピングされた財産目録も添付可能となりました。
デメリット1への対処
法務局に遺言を保管してもらう。
Aが死亡時に通知してもらいたい相続人Cを指定しておくと、
法務局が市役所の戸籍課と連携して、
遺言者Aが死亡したときに、
Cに対し
遺言書の保管を通知します。(死亡時通知制度)
デメリット1への対処
公証人役場に行き、公正証書遺言を作成することです。
このことによって、交渉人役場であなたAの遺言は保管されます。
ただし、公正証書遺言を作成するときには公証人への費用が発生します。
また、書き換えや撤回が容易ではなくなります。
デメリット2への対処
弁護士など法の専門家に遺言書をチェックしてもらうと良いでしょう。
生前贈与
Aさんが存命中に、Cと贈与契約を締結し、財産の移転を実行します。
メリット
毎年110万円まで基礎控除がある。毎年コツコツ行えばメリット大。
デメリット
1 贈与には、受け取る側Cの承諾が必要(遺言はAの単独行為。)
2 Aの死後、相続人間で揉めがち
Aの死後、Cの兄弟間などの間で不当利得返還訴訟の争いが生じることがあります。
Cが生前、Aの金銭管理をしていたなどという事情があれば、横領などの嫌疑を受けてしまいがちです。
3 相続税より税率が高め
贈与税の対象となるからです。
4 撤回したい時や、贈与の内容を変えたい時も契約書面にしたら、基本的にはできない。
遺言と違い、相手がいる贈与契約なので、書面にされたら拘束力が生じます。
デメリット2への対応
弁護士などに頼み、贈与契約書を作成し、Cの立場の保護を図る。
死因贈与
ややマイナーな手段ではないでしょうか。
メリット
1 贈与税ではなく、相続税として取り扱われる。
よって、相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×相続人の数
が比較的大きい。
2 受け取り側Cが、Aから受け取る内容を事前に知ることができます。
よってCがAの面倒を生前によく見てくれるかもしれません。
3 死因贈与には「方式に定め」がありません。
(しかし、Cの兄弟間の争いなどを未然に防ぐために契約書にしておく必要があるでしょう。)
デメリット
1 撤回や書き直しが自由にできるかどうかについては、法律上争いがあります。
2 法務局の保管制度が使えない。
(しかし、契約書にしておけば、 Cのもとにこの契約書が保管されるわけですから、あまり問題はないといえます。)
共通の注意点
最後にすべての方法に共通する注意点を申し上げます。
それは
Aの認知機能が万全である早いうちに
これらの手段を実行しておくこと
です。
なぜなら、Aの加齢による認知機能の低下の程度によっては、
遺言、生前贈与契約、死因贈与契約が無効である
と裁判所などで争われる可能性があるからです。
この場合せっかくAが自分の死後に備えたとしても、その努力が水泡に帰してしまいます。
まとめ
以上、財産を相続させる3つの方法について解説してきました。
それぞれのメリット・デメリットを勘案して、
あなたにとっての最適解
を検討してみてください。
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