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民事

不倫の代償

 

不倫相手の夫から、

不倫の事実を職場に言い触らすぞ、

写真をばらまくぞ、

慰謝料を払え

などと脅されて困っているなどのお悩みをお持ちでないでしょうか?

 

今回はこの問題について実務経験10年以上の現役弁護士が、相談例をもとに解説していきたいと思います。

相談例

私A(独身、20代)はひょんなことから職場において、夫と子供のいる女性同僚B(30代)と不倫関係になってしまいました。

きっかけは、Bが私Aに「子供の家庭教師になってほしい」と言うことで、連絡先を聞いてきたことです。

その後も、Bの積極的にアプローチにより、ABは2人で会うようになりました。

 

Bは私Aに対し

「夫婦関係が上手く行っていない、子供がいるから夫婦が続いている、 夫の浮気もある」

とも漏らしていました。

 

私Aの人事異動があったため、Bとの密会の頻度は月1、2回程度でした。

しかし、約6ヶ月後、

車内で2人でいるのをBの夫Cに偶然見られ

発覚することになりました。

 

それ以後、夫CはBから入手した

AとBの仲むつましい様子の写真、

ベッド上での2人の写真

などを私の実家に送りつけるなどして、

 

この写真を職場にばばらまくぞ

などと脅してきます。

 

私は仕事が手につかず精神的に参ってしまってい、 弁護士Lに本件を依頼することにしました。

 

受任通知

 

弁護士Lは早速、Cに対して内容証明郵便を送付して、

弁護士が代理人として本件に着手したこと

を伝えました。

 

そしてその内容証明郵便の中で、

夫Cの行為は社会的相当性を超えるものであって、脅迫罪等にも該当し得るものである

と警告し、

本人A、Aの実家、Aの職場には一切接触しないよう求めました。

 

夫Cからの手紙の回答があり、

今回の不倫によってCの家庭が崩壊したこと

などを主張して、相応の慰謝料を請求する

と言ってきました。

 

弁護士Lは、Aから聴取した内容と異なる事実関係については、これを否認するなどして交渉し、

結局のところ

慰謝料1,000,000円の支払をもって和解する

という合意を取り付けました。

 

金額の相当性について

 

不倫をされた配偶者は、不倫相手に対して、不法行為(民法709条、710条)に基づく慰謝料請求という法律構成をとります。

 

最高裁判所(最判平成8年3月26日)は、

不貞が不法行為となるのは

それが一方当事者の婚姻共同生活の平和の維持という権利
又は
法的保護に値する利益

を侵害する行為だから

としていす。

 

例えば、

  • 2人の密会の頻度、
  • どちらが不倫関係を主導したか、
  • 不倫時に夫婦関係は破綻していたかどうか、
  • 夫婦間に未成熟の子供がいるかどうか

 

などの諸般の事情を総合的に考慮して

 

BCの間の婚姻共同生活の平和の維持という権利

または法的保護に値する利益

侵害したかどうか、

その侵害の程度はどのくらいか

ということにより慰謝料額が決定されます。

 

本件ではAの話をもとにすると、

  • BC間の婚姻生活は実質的に破綻していた、
  • 本件不倫はBが主導した、
  • 密会の頻度も月に1、2回程度で、密会の期間は半年間

と言う事情があり、慰謝料額としてはそれほど高額にはならないと考えます。

 

しかし、

Aが精神的に参っていることや、

現在は別々の場所で働いているとは言え、同じ会社内での話であること

などから

刑事告訴を望まず、早期解決を望む本人Aの希望もあり

慰謝料1,000,000円払って本件和解契約で終結させることとなりました。

弁護士が入って和解契約書を作成しますので、

本件について蒸し返されないよう、きっちり精算条項を入れ、

本件について以後CはAに対して接触しないことなどを約束させました。

 

Cとしても脅迫罪として告訴される事については懸念があったでしょうから、この和解に 応じてきたと言う面はあったと思います。

 

弁護士費用

 

着手金200,000円+終結時の弁護士報酬100,000円をいただいたので合計300,000円の支出となりました。

和解金1,000,000円と合わせると、Aにとっては相応の出費となりましたが、 事件が解決してAはとても安心して満足していました。

 

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