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ビジネス

企業や団体の内情をSNSに暴露された場合、懲戒解雇は可能か

 

企業や組織の内部情報をSNSに投稿されたため、企業などの社会的信用が毀損された場合、企業等は当該発信を行なった労働者に対してどのような制裁を行うことができるのでしょうか?

懲戒解雇を行うことができるのでしょうか ?

 

今回この問題について実務経験10年以上の現役弁護士が解説したいと思います。

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相談例

 

B病院はある特定の分野について有名な病院です。

 

Bはこのたび、各ドクターも参加させて、

救急救命措置についての院内研修

を行いました。

 

この病院で働く新米ドクターのDは、この院内研修の様子を、自身のSNSにアップし、

「 質問が素人すぎる、

心臓マッサージを経験したことのないドクターがいて驚いた、

(研修参加者は)救急をなめている」

などの投稿を行いました。

 

Bはこの投稿の存在を知り、Bの社会的評価を毀損するものだとして、Dを懲戒解雇したいと考えました

BはDを懲戒解雇することができるでしょうか?

 

結論

結論から言うと懲戒解雇することは難しいと考えます。

 

理由

 

懲戒解雇の限定性

 

懲戒解雇は、

企業が労働者に対して行う処分としては

最も重い部類のものです。

 

普通解雇とも異なり、制裁的な意味合いがとても強い処分です。

懲戒解雇を受けると、当該労働者の再就職は非常に難しくなります。

 

従って、例えば「経理担当者が会社の預貯金を横領していた」と言うような場合など、

重大な企業秩序違反があった場合で、

かつ、

指導教育などを行ったが改善が見られない

など非常に限定された場合にしか懲戒解雇が認められていないと考えて良いでしょう。

 

今回のDの行為は 当該SNSを見た一般の人に対して、確かに B病院の社会的評価を下げるものといえます。

名誉毀損罪(刑法230条)の適用も考えられます。

 

B病院が民間病院であること、 救急医療はB病院の専門ではないことなどを考え合わせると、本件でのDの投稿が

公共性を有している、とか、公益目的である

として違法性が阻却されることも考え難いです。

 

病院Bがとるべき対応

 

Dがこれまで懲戒処分を受けた事はないと言う前提ですと、

BはDに対して譴責処分(始末書を提出させて反省を流すこと) を試みるべきです。

 

そのような処分にもかかわらず、

Dがなおも今回のような行為を繰り返すのであれば、

さらに懲戒処分のレベルを上げて

減給処分や出勤停止処分等

を行うことになるでしょう。

 

それでも、Dが同じ行為をなお繰り返す場合に初めて

懲戒解雇を検討しても良い段階に入ってくるのです。

それほど懲戒解雇を行うのは難しいのです。

 

よって、法律実務としては、懲戒解雇を行うのではなくて普通解雇によって、労働契約の解消を図るということが多いです。

 

但し、この普通解雇

客観的合理的理由があって

それが社会的相当でないといけない(労働契約法16条)

という縛り(しばり)がありますので、

慎重に行わないといけません。

公益通報者保護法

今回のDの行為は

公益通報者保護法により保護され、懲戒処分は許されないのではないか

という懸念があります。

 

公益通報者保護法と言うのは、

企業や団体の内部告発者を企業の報復たる懲戒処分等から保護することによって、

国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を図る制度

です。

 

そうすると

Dに対する譴責等の懲戒処分はこの法律によって無効になるのではないか

と言う懸念が生じてきます。

しかし、公益通報者保護法の対象は

同法別表に記載された企業の法律違反

に限定されております。

 

今回Dが告発した内容は「Bにおいて何らかの法律違反が行われている」

と言うものではありませんので、今回は公益通報者保護法の適用対象外となります。

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