弁護士中村亮佑のブログへようこそ
民事

兄弟間の境界紛争とその対処

 

兄弟間で分割した親の土地の境界について揉めていませんか

一方が感情的になっており、身辺への危険を感じるまでに境界紛争が発展してい場合、どのように対処したら良いのでしょうか

 

今回はこの問題について、実務経験10年以上を有する現役弁護士が、対処法を解説したいと思います。

 

相談例

 

母Mのことについて息子Kから相談がありました。

 

MとAは、20年前、亡き父から下記の土地の分割譲渡を受けました

 

結果、土地の所有関係は下記のとおりになりました。

ブロック塀はMが当時、設置しました。

 

Mは奥の畑の通用路として「Mの土地 + X 」を所有、利用しています。

Aも右隣の土地を所有、利用しています。

 

しかし、最近、AがMに対し、

Aの土地は本当は「Aの土地 + X」である。

境界はブロック塀よりも左にある。

と主張し出しました。

 

Aは元来粗暴で、今回のことでとても感情的になっています。

AはMに対し「ブロック塀を左に作り直せ」と要求することに加え、Mを盗人呼ばわりしています。

 

母Mの身に危険を感じたKはこの問題に対する対処を弁護士に相談しました。

 

どのような対処が適切か

 

境界の問題について

 

筆界と所有権界

 

一般に「境界」と言われるものは、法律的には

筆界」、「所有権界」

という概念に分けられます。

 

筆界とは法務局が引く線です。

他方、所有権界は、所有権の範囲という意味で隣地との境界になります。

 

両者は一致することが好ましいですが、必ずしも一致しないこともあります。

 

例えば、当事者の一方が、筆界を超えて他人の土地の一部の占有を継続し、時効取得が認められた場合、

その占有部分の際(きわ)が所有権界となります。

この場合、所有権界と筆界とは異なることになります。

 

本件について

 

Aが筆界の特定について法的手続きを取ってきたら、その時対応すれば良いでしょう。

現存するブロック塀は重要な証拠資料の一部となります。

 

Aが所有権界確認、及び、ブロック塀の撤去を訴訟などで求めてきたら、その時対応してください。

 

この場合、Mは

所有権界は現状のブロック塀の線である

万が一、X部分がA土地の範囲内であったとしても、MはXを時効取得している

と主張することになるでしょう。

 

20年前の事なので、 Aがその主張の正当性を示す証拠等を裁判所に提出することは難しいでしょう。

よって、 Aの主張が裁判所において認められる公算はかなり低いです。

 

小括

 

境界の問題については、

高い弁護士費用を払ってこちらからアクションを取る必要はなく

相手の要求を拒否し続ければ良い

と思います。

 

相手が法的手続を取ってきたらその時、弁護士に相談し、代理人として手続をしてもらいましょう。

このような対応で充分と思います。

 

Mの身の安全策について

 

「Aの要求を拒否し続ける」というMの態度に対して、Aが脅迫的文言や、暴力行為等に及んだ場合に備えて、

MがスマホでAの発言をすぐに録音できたり、録画できたりするように

子Kは母Mとともに 予行練習などをしておくこと

をおすすめします。

 

Aがこのような暴力的行為に及んで来た時、Mは

脅迫罪、強要罪、暴行・傷害罪、住居侵入罪などで告訴すること

が考えられます。

しかし、その場合も証拠がなければ警察はなかなか検挙しづらい面があるからです。

嫌疑が不十分な状態では逮捕等の刑事手続をとることが難しいのです。