先祖代々受け継いできた田んぼや畑の管理ができなくなり、
不動産業者に売ること
をご検討の方も多いのではないでしょうか?
今回は
土地の一部に他人の土地が混ざっていたため、 そのような売却計画が中断してしまっている場合の対処
について、 実務経験10年以上有する現役弁護士が解説したいと思います。
相談例
私(乙)は亡き父(甲)から相続した土地(本件各土地)が複数、広範に存在します。
昔は田んぼとして使っていたようですが、 代替わりした今では、私は会社に勤めていますし、身内に誰も農業をする人がいないので、草や木が伸び放題となっています。
毎年の草刈り作業も大変なので、不動産業者に本件各土地をまとめて売ることにしました。
不動産業者は本件各土地を開発して、住宅街を作るようです。
問題発生
しかし、登記簿を確認していると、本件各土地の一部に
楕円状の土地(B土地)
が存在することが判明しました。とても小さな面積です。
以前は祠(ほこら、家や土地を守る神様を祀る(まつる)もの)として使用されていた様です。
そしてB土地の名義はAと記載されていました。
私(乙)はAやそのご親族とは全く付き合いがなく、どこに住んでいるかもわかりません。
祠(ほこら)の位置は本件各土地の中心に近いところ(重要な部分)に存在しますので、不動産業者は
この問題が解決しないと本件各土地を買い取らない
と言っています。
私(乙)はこの問題にどのように対処したらよいでしょうか?
スタート
亡甲、及び、乙が本件各土地を管理する中で、B土地も自分らの所有物として管理してきた経過が本件ではありました。
よって、10年または20年の取得時効を原因とする所有権移転登記手続をすることができれば、この問題が解決すると考えました。
そこで、まずAに対し取得時効を原因とする所有権移転登記手続に協力していただけないか打診する事がスタートとなります。
Aの死亡と相続
登記簿謄本記載の住所・氏名を頼りに、市役所において、弁護士職務上請求による住民票、戸籍を取得しました。
その結果 Aが既に死亡していることが判明しました。
そこで、この土地を相続したAの相続人の調査をすることにしました。
Aは大正生まれの方で、 Aのお子さんが複数いらっしゃいました。
加えて、お子さんすら亡くなって、お孫さんまでに相続人の範囲が及んでいる事案でした。
結局、相続人は10名弱いらっしゃいました。
加えて、戸籍の附表を取得した結果、相続人のほとんどは市外・県外にいることが判明しました。
また、相続人の中にはかなりご高齢の方もいて、 場合によっては後見人や、保佐人等を選任してもらって、その後見人らと登記移転手続に臨まないといけない可能性も考えられました。
方針の決定
目的の登記を実際に担う司法書士とも相談した結果、
このような事案では、一番時間的に早く目的を達成するには、
取得時効に基づく所有権移転登記手続請求訴訟を提起して、欠席判決を得る
その確定判決を持って、法務局において登記手続をすることだ
と判断しました。
乙と私(弁護士)との委任契約、弁護士費用等
楕円状の小さな土地(B土地)といえども、訴訟提起するという作業、及び、それに費やす労力は他の訴訟とあまり変わりがありませんので、着手金は税込みで330,000円いただきました。
加えて、成功報酬として本件が目的どおり無事に達成できた場合は「税込み220,000円をいただく」と言う約束をしました。
実費としては、相続人調査にすでに数万円かかりました。
その他、裁判所に支払う印紙代、予納郵便切手代などで10,000円程度かかることが予想されます。その他、最終的に司法書士先生に登記を頼むと100,000円程度かかることが予想されました。
今日のご報告はここまでにしたいと思います。
次回は「訴訟提起以降の経過」についてご報告したいと思いす。