出し子が特殊詐欺罪の共謀共同正犯として起訴された場合、
特殊詐欺を含めた何らかの犯罪に関与してるかもしれないとの認識はありました
と供述した場合、実際の裁判の帰結はどのようになるでしょうか。
実務経験を10年以上有する現役弁護士がこの問題について報告します。
事実認定の問題として判断される
裁判所は
被告人が被害者(高齢者)とコンタクトするときに偽名を使っていること、
オレオレ詐欺のような特殊詐欺は社会問題化してテレビやニュースでよく報道されており、そのことを被告人は知っていたこと、
荷物を受け取りに行って所定の場所へ渡すだけで比較的高額の報酬がもらえること
など客観的に認定可能な事実を用いて、
被告人はオレオレ詐欺など特殊詐欺を含む何らかの犯罪事実に関与しているかもしれないという認識を持っていた
と認定することが多いです。
よって、この場合は故意が認められると言うことになります。
加えて、
そのような認識のもと荷物の受け取りを依頼した黒幕と
その仕事の内容、方法等を話し合っていることが共謀にあたる
と認定されて共謀も認められるとされてしまうことが多いです。
結局、実務上では事実認定の問題として
特殊詐欺を含む詐欺について、ある程度の犯罪の認識を有していた
と言う判決により有罪となってしまう結論がほとんどだと実感しています。
現に私が故意と共謀を争った事案も、そのような結論になってしまいました。
犯罪の認識が全くなかったと主張した場合
他方で、
私は犯罪行為に関与していると言う認識は全くありませんでした
完全に合法的な仕事だと思っていました
と被告人が供述した場合 どうでしょうか?
仮にこのような事実認定がされた場合、純粋に法理論的には、共謀や故意は無い=無罪だと判断することになると思います。
しかし、実務上はこれも事実認定の問題として決着がつけられてしまうでしょう。
つまり
本件に現れた客観的事象、具体的には、
荷物受け取りの時に偽名を使っていること、
通常の企業の仕事では考え難いような指示(例えば「不必要にタクシーを複数台乗り継いで行け」と言う指示)に従ってこの仕事を遂行している
など様々な客観的事実を認定して、
被告人の上記供述は信用できないとされ、故意や共謀が認められてしまうことになると考えられます。
裁判例として
福岡高裁判決平成28年12月20日が参考になりそうです。