相談
私(70代)は独居の高齢者A(87、認知症なし)への療養看護や身の回りの世話を5年位にわたってしてきました。
Aは奥さん(B)を5年前に亡くし、子供もそれより以前になくしていました。
この度、Aが急死しました。
葬儀代など合計30万円を立て替えています。
手元にAの預金通帳(3000万円ほど)があります。
Aの財産はこれだけです。
Aには兄弟が複数名いるようです。
何とかして立て替え金30万円を回収できないでしょうか?
私はAへの療養看護分をいくらかもらえないのでしょうか?
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回答
残念ながら、相続人でないあなたはAに対する療養看護分を請求することはできません。
相続人がいない場合ならば、特別縁故者であることを根拠にして療養看護によって財産が増加した場合は、いくらか請求することができる可能性が出てきます(民法958条の3)。
Aさんを看護療養したというだけでは足りず、その看護療養によってAさんの財産が増加したと言うことを立証しないといけないです。
〜参考図書〜
新版注釈民法(27)相続(2) 相続の効果 — 896条~959条 補訂版。
立て替えた300,000円についても、 相続人を調べてその方々に請求していくことになります。
相続人の方が6人であれば全員に対し50,000円ずつしか請求できないと言うことになってしまいます。
これはとても煩雑です。
加えて、各相続人がその請求を無視すれば、あなたが訴訟等で請求していかないといけません。
しかし、300,000円程の請求で弁護士をつけて訴訟を起こすと言う事は費用だおれの恐れが高く、なかなか難しい問題です。
遺言をしておけば
私はこのような場合こそ、Aさんは遺言を書いておくべきだったと思います。
Aさんは87歳であり、
普段は元気であっても、今回のように突然、急死
してしまうかもしれません。
身寄りのないAさんは
死亡後の事務、葬儀代、各種電気ガス水道契約の解約、病院への支払い等
のため動いてくれる人がいて、それが
第三者であり相続権がない人
であるならば、
遺言を書いて財産をある程度渡すようにしておくことが好ましかったと思います。
また、死後事務委任契約を締結する
などして、あらかじめその事務を遂行するに必要なお金を今回の相談者さんに渡しておく等の対処も必要だったかもしれません。
でないと、今回の相談者さんのように
Aさん存命中は善意でAの世話をしてきた。
そしてAさん死亡後は、葬儀費用等の建て替えをして、また、市役所の関係などいろいろ働いてきた
のに、それが金銭的に報われない。
そればかりか、立て替えたお金も回収もなかなか大変である
と言うような目に遭ってしまいます。
Aさんご存命中は、相談者さんの方からこのような話を投げかけるのは難しいことだとは理解しています。
しかし、それをしておかないとこのような事態が生じてしまうのです。
Aさんの死後については「縁起でもない」と一蹴せず、できるだけ話し合っておき、場合によっては遺言を作ると言うところまで進めておくことをおすすめします。
自筆証書遺言であれば、自宅で作成できます。
できた遺言書を弁護士などに見せて、添削してもらえば有効に作れますので、 そんなにハードルが高いことではないです。
本件のような事案に当てはまる高齢者の方、また、その高齢者を支えている方は、遺言や死後事務委任契約をすることも、ご本人と話し合い、検討しておきましょう。
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