・後見、保佐ってよく聞くけど実際どんな制度?
・後見人の業務内容は?
・後見人の報酬は?
・任意後見とどう違うのか?
・私の親のため後見を申し立てた方が良いのか。
などの疑問があると思います。
今回は、弁護士業15年以上の高齢者問題に詳しい弁護士がこれらの疑問に答えるべく、解説していきたいと思います。
法定後見制度とは?
法定後見制度とは、「判断能力が不十分になった方を法的に支援する仕組み」です。
たとえば認知症、知的障害、精神障害などによって自分の財産や契約の判断が難しくなった場合に、家庭裁判所が「後見人」を選任します。
この後見人が、本人に代わって契約や財産管理を行い、本人を法的に守るのが制度の目的です。
後見・保佐・補助の違い
法定後見には、判断能力の程度に応じて3つの類型があります。
本人の状態に応じて、支援の範囲を段階的に決める仕組みです。

どんなときに利用されるの?
私の経験上、法定後見を使うケースはおおむね次の4つに分類できます。
(1)身寄りのない高齢者が施設入所中の場合
施設と入所契約を結ぶ必要がありますが、認知症で判断が難しい場合、誰が契約するのかが問題になります。
そのときに家庭裁判所へ申立てをして、後見人をつけることがあります。
(2)虐待(特に経済的虐待)が疑われるとき
たとえば親族が年金を本人のためでなく自分の事業資金などに流用していた、というケース。
こうした場合、後見人が財産を本人名義の口座で管理し、適正な支払いを行うようにします。
(3)将来の相続トラブルが予想されるとき
「介護費が高すぎた」「無駄遣いした」など、相続後に親族間で揉めることがあります。
後見人がついていれば、支出は家庭裁判所の監督のもとで報告・承認されるため、後の紛争予防にもなります。
(4)悪質商法などの被害防止
独居高齢者が訪問販売などで不要な高額商品を買わされるリスクもあります。
後見人がついていれば、こうした契約を「取り消す」ことができる場合があります。
後見人になれるのは誰?
多いのは親族ですが、身内でトラブルがある場合や、なり手がいない場合は、弁護士・司法書士・社会福祉士などの「専門職後見人」が選任されます。
最近では「市民後見人」といって、一定の研修を受けた一般市民が後見人となるケースも増えています。
知人や友人である「他人」が後見人となる場合少ないと認識しています。
後見人の仕事と責任
主な権限と義務
- ・本人に代わって契約・手続きを行う
- ・財産の管理(預貯金・不動産・年金など)
- ・本人の生活・医療・介護の支援(身上監護)
同意権・取消権
後見人がついていれば、本人が不利益な契約をしたときに「取り消す」ことができます。
ただし、支払済みの代金を取り戻すのは現実的には難しいので、そもそも被害を防ぐことが重要です。
費用と報酬
後見人や監督人には、裁判所の許可を得て「本人の財産から」報酬が支払われます。
目安としては、完全な主観ですが、月1万〜5万円程度(ケースによる)かなというところです。
報酬を辞退することも可能です。
「後見人が厳しすぎる」と感じたら?
報道などで「本人の希望する支出を後見人が認めない」などの話を聞くことがあります。
確かに一部ではそうしたケースもありますが、本人の意向を最大限尊重しようとする後見人もたくさんいます。
最近は裁判所も「本人の意思の尊重」を重視する方向です。
必要な支出なら、裁判所と相談のうえで柔軟に認められることも多くなっています。
任意後見制度との違い
「任意後見制度」は、本人がまだ判断能力のあるうちに「将来、自分の後見人になってほしい人」と契約しておく仕組みです。

家族信託との違い
家族信託(民事信託)は、「信頼できる家族に財産管理を託す」制度です。
基本的に、財産管理と、財産の承継機能を有します。
任意後見や法定後見と併用することも可能です。
ただし、信託では「介護や医療の判断(身上監護)」までは含まれません。
財産管理を中心に行いたい場合や、財産承継を先々まで具体的に決めたい場合などに向いています。
申立ての流れと専門家の関わり
家庭裁判所への申立ては、本人・親族などが行います。
弁護士に依頼した場合、戸籍の取り寄せ、申立書の作成、裁判所とのやり取りを代理して行います。
費用の目安は20万〜50万円程度です。
司法書士や行政書士の場合は「書類作成のみ」でより安価に依頼できることもあります。
まとめ
後見制度」は、本人の尊厳を守りながら、家族の安心にもつながる制度です。
ご家族の判断能力や生活に不安を感じたときは、早めに専門家へご相談ください。
記事作成:弁護士中村亮佑(中村亮佑法律事務所)

